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桃衣の天使
第1章 桃色の天井
 高樹と名乗ったのはさっきのオッパイ看護婦さんだ。大丈夫かな?この人からなんとなくドジっ子ナースオーラを感じるのだが。ラノベや漫画では楽しい存在だが実在したら命に関わるぞ。まあ名門病院のICUのナースしてるのだ。大丈夫だ・・・よな?
 翌日の昼前にはICUを出て病室に移動になった。予想はしていたが個室。しかも特別室。所謂政治家先生が別荘代わりに使う部屋だ。「贅沢だ」「勿体無い」とは言うだけ無駄なので甘えることにした。今夕には母さんも顔を出すと言ってるのでそれまではのんびりさせてもらおう。
 ベッドの他に大型のテレビにBlu-rayプレーヤー。冷蔵庫にソファーまである。高樹さんからは必要ならゲーム機でもパソコンでも取り寄せると言われたが、取り敢えず御断りしておく。
 他の部屋と違い完全防音ということでイヤホンなしでテレビが観れるのがありがたい。ワイドショーはタレントの○○が不倫したとどうでもいい話題で盛り上がっている。
 ドアがノックされたのでテレビを消すと高樹さんがお盆を手に入ってきた。昼食の時間だ。そう、飯。利き腕が使えないから箸は無理。スプーンとフォークでなんとか食べるしかないか。盆の上には粥と温野菜。それに果物が乗っている。これなら片手で食べれそうだな。と思っていると紙エプロンを掛けられる。成る程。使い慣れない左手でこぼすのを見越してるんだな。
 では、早速お粥を頂こうと蓮華かスプーンを探すが盆の上には無い。
 「高樹さん?」
 蓮華は高樹さんの手の中でお粥を掬って待機していた。
 「はい、あ~んして下さい。」
 「いえ、自分で食べれますから。」
 左手は無事なのだ。食べさせてもらう必要はない。
 「あ~んしてくれないと蓮華が重くてお粥溢しちゃいそう。」
 食べさせる事を諦めそうもない。仕方がないので口を開ける。
 「今、フーフーしますからね。」
 俺の顔の近くに持ってきた蓮華に息を吹き掛ける。歯磨き粉だろうか?口臭剤だろうか?爽やかなミントと甘いストロベリーの合わさったような薫りが鼻を擽る。唇に付けられた蓮華からお粥を啜る。美味い。お粥を美味いと思ったのは初めてだ。米が良いのか水が良いのか。兎に角美味い。
 「もう一口食べますか?」
 高樹さんの薄いピンクの口紅を塗った唇が動く。一も二もなく頷くとフーフーして冷ました粥が運ばれる。
 
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