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不倫研究サークル
第5章 初デートはホロ苦く
「なんだか、竜宮城みたいな駅だね」

片瀬江ノ島駅は、まさに竜宮城と言った感じの駅だった。

片瀬江ノ島駅から江ノ島水族館までは歩いて10分くらいだ。僕たちは国道の方へ出て、海岸沿いを歩く。

微かだが潮の香りがして、海沿いで育った僕にとっては、ただただ懐かしかった。

故郷を出てまだひと月だと言うのに、田舎で過ごしたことがずっと昔に感じられた。

「ん~、潮の香りが懐かしいね~」

そう言うと、小梢は大きく息を吸い込み、目を瞑った。


(あれ? そういえば、小梢の故郷って何処だっけ?)

「あのさ、小梢の故郷も海の近くなの?」


「あ! 水族館だよ、圭君。凄い~大きいね。それにお洒落な建物~」

小梢は、僕の問いかけには答えず、僕の手を引くと水族館の方へグイグイと引っ張っていく。

どうやらテンションのスイッチが入ったみたいだ。

僕もワクワク感が増し、小梢の故郷の事など頭の片隅に追いやられてしまった。

なにせ僕は、こんな大きな水族館は初めてだからだ。最後に水族館に行ったのは、中学一年の時の遠足以来だ。それも、田舎の小さな水族館に。







「うわ~、大きな水槽。ねえ、圭君、エイが泳いでる~凄い! たくさんいる!」
小梢は、水槽に沿ってエイを追いかける。

水槽の中には多くの魚が泳いでおり、大きな体のエイはひと際目立っていた。
僕も、こんなにたくさんの魚が泳いでいる水槽を見るのは初めてだ。もちろん興奮している。

(なんか、良い雰囲気だ……。これなら、イケそうな気がする)

プラン通りに進むデートに、告白タイムは刻刻と迫っている。

僕は少し自信が湧いてきた……。




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