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体育倉庫のハイエナ
第24章 24
 果たして“何”が出たのかは、きっと言うまでもないと思う。

 何故なら三人は揃って、その光景を見ていたのだから。

 しかしそれをわざわざ口にするところに、この三人に共通する底意地の悪さがあった。

「出たよーーーぉッ!マン汁が出た出たーッ!『チ×ポ、ブチ込んで貰える』って聞いて、オマ×コちゃんが喜んでるよーーー!」

 まるで応援している野球チームのバッターがホームランを打ったかのように、マモルがそう騒ぎ立てて、ヒデアキも負けじと、はしゃいだ。

「うわーッ!まだ出てるッッ!!出てる出てるッ!マン汁が出てるーーーッ!アーッハッハッハッ…」

 ところでこの頃――少なくとも騒いでいる三人は、その秘部にのみ関心を抱いて、当の本人にはその存在すら忘れているみたいだったけど――奈津子は無駄な哀願は、もはや口にしなくなっていた。

 この三人に、それ以上の行為を踏み留まらせることが不可能であることを、完全に思い知ったようだ。

 代わりに奈津子は、悔しそうに泣きながら、まるで三人を呪うように、静かに恨み言を繰り返していた。

「ヒドい…ヒドすぎる…どうしてそこまで、人を傷付けることが出来るんですか?…人を傷付けて、そんなに面白いんですか?…あんまりです…許せない…絶対に、許せない……」

 絶望に打ち拉がれたその声は、深い悲しみに満ちていて、また今にも千切れそうなほど、か細い。

 そんな光景を横から眺めていると、僕は奇妙な感覚に囚われた――奈津子の秘部を見て大はしゃぎする三人と、依然として冷淡な笑みを湛えて奈津子の背中を踏み付けているレンヤ、そしてひたすら悔し涙を流す奈津子――それぞれ別々の世界で起こっているような出来事が、同時に存在している。

 それは不思議で、そして残酷なことこの上ない光景だった。
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