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体育倉庫のハイエナ
第14章 14
 む~ぬっちゃぁ…むちゅ~~じゅぶじゅるぅ…じゅちゅぅ、じゅるむぬちゅっ…――

 さっきまで奈津子の秘部から響いていた音を『長靴を履いた子供が水溜りの中に立ってはしゃいでいるような』と例えるなら、今まさに僕の耳に聞こえてくる、“大人のキス”の音は、さしづめ『ぬかるみに足を取られてそこから抜け出そうと、必死でもがいている』といったところだろう。
 
 でも、さっきまでよりけたたましい筈の、その音が持つ存在感は、レンヤの“大人のキス”を受けて悶える奈津子の喘ぎ声によって、殆ど掻き消されていた。

「ハァァァッ、ハァァ―――んなああッッ!!」

 今の奈津子の呼吸は、『熱に魘されているような』という比喩では不十分で、『百メートルを全力で泳ぎ切ったような』感じで、そこに含まれる喘ぎ声も、もう“細やかな”ものではない。

「んああ、なあッッ!…ああぁあッ、がぁッ、んなぁッ!…ぁぁぁああふ~~ぁぁぁあああッ、んああ、あがッ、が、かぁ、くふぅぅぅッッ!!」

 そこに含まれる響きは時として、尻尾を踏まれた子猫のような怒声にも似ており、時として涼風に吹かれる爽快感を彷彿とさせる。

でも、たいていの場合は、その両方が同時に存在していた――奈津子は怒り狂うような声を上げて、快感を楽しんでいた。

 ただ、『楽しい夢を見ているような』微笑みは相変わらずだ。

 尤もこの期に及んでは、”微笑み”よりも”満面の笑み”の方が、言葉としては正確だと思う。
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