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体育倉庫のハイエナ
第17章 17
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 当たり前の話だけど、僕は男だから、女子の肉体が受け取る特有の、その感覚は分からない。

 でも、自分の経験を参考にすれば、僕は射精する時、その直前に実に苦しい瞬間を、必ず経る。

 呼吸を止めて身構えずにはいられない、全身を緊張させて挑まざるを得ないような、苦悶の瞬間だ。

 皮肉なことに、その苦悶の度合いは、そこに至るまでに僕の肉体に積み重ねられた快感が、多大であるほど大きい。

 さらに皮肉なことに、射精の際に得られる快感も、その苦悶の度合いに比例する。

 射精寸前の苦悶が、辛ければ辛いほど、射精の快感は素晴らしいという訳だ。

 その一方で、いつまでも自分の肉体を、快感の波に晒しておくことも出来ようはずもない。

 積み重なった快感は――きっと男であれ女であれ――“絶頂”に到達してこそ、本当の至福に変わる。

 絶頂を迎えられない快感は自分の肉体に、はしたない不満を残すだけだ。

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 だから僕は、肛門や乳首への愛撫を拒否する奈津子の気持ちが、何となくだけど分かる気がする。

 きっと今の奈津子の肉体は、僕が射精の直前に経験するあの苦しい瞬間の中を、長く長く彷徨っているのだ。

 そして、もしそうだとすれば、それはそれは奈津子は辛いことだろう――僕はこの時ばかりは、奈津子に同情した。
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