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セレナーデ
第3章 3 優樹
 お盆の間、部活がなかったので優樹は朝から母の緋紗と一緒にペンションにやってきた。
父の直樹は買い換えたパソコンのセットアップをするらしい。
緋紗は陶芸教室が休みなので自分の作品を作るといってアトリエにこもった。

 優樹は和夫についてペンションの雑用をこなしていく。
「じゃあ優樹、客室の掃除頼むよ。慌てなくていいから丁寧にな」
「うん」
「午後からは和奏と一緒にディナーの手伝いな」
「了解」
「優樹が来てくれて助かるよ。俺も最近、歳だからなあ」
 豊かな銀髪を撫でつけながら目じりを下げ、嬉しそうに言う和夫に優樹は元気よく答えた。
「俺、このペンション好きなんだ。将来ここで働いてもいいよ」
「お?そりゃ頼もしいな。まあここは優樹の別荘みたいなものかもな」

 ますます嬉しそうに和夫は優樹の頭を撫でながら厨房へ向かって行った。
優樹はなんとなく飛び出した『ここで働いてもいい』という言葉に改めて自分で考えてみた。
(ほんと、ここで働けたらいいよなあ)
まだまだ高校一年生になったばかりなので具体的な進路を考えたことはなかった。
直樹も緋紗も好きな道に進めばいいと言ってくれる。
両親のことを見ていると好きなことを仕事にすることが、とても大切だとは子供のころから感じていた。
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