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セレナーデ
第3章 3 優樹
二人とも仕事が好きなのだろう。
肉体的にも精神的にも楽には見えないが未だに向上心が見て取れる。
決して経済的には豊かではないのに満ち足りているような二人だった。
(俺の好きなことって何だろうなあ)
優樹にはこれといって好きだと思うことはなく、これがしたいという強い希望もなかった。
しいて言えば人とわいわい仲良く楽しく過ごす中で、自分を必要とされることが嬉しかった。
サッカー部でも従兄の孝太のようにシュートを決めに行くスター選手ではなく、チームワークを大事にしサポートして和ませるようなムードメーカの様な位置だ。

 付き合っている彼女からほんとに自分のことを好きなのか?と問い詰められたことを思い出した。
もちろん『好きだ』と答えたがきっと彼女が優樹を求めたから応じてしまったように感じる。
 ふうっと大きな息を吐いて客室の取り換えた全てのシーツをかごに入れて運んだ。
(俺は穏やかに心地よく笑って過ごしたいんだよなあ)
なんだか年寄りくさい気がしたが、心からそう思っている優樹は後で和奏に相談してみようと思った。
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