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セレナーデ
第1章 1 和奏(わかな)
ペンション『セレナーデ』は吉田和夫と今は亡き妻の小夜子が始めたもので二十年以上経っていた。
丸太小屋でできた温かみのある建物は、年月とともに重厚でどっしりとしたアンティーク感をも醸し出している。
周囲のモミの木やオーク類が異国情緒感じさせちょっとしたおとぎの国の家のようだ。
運営が始まった当初から優樹の父、大友直樹は林業組合員で仕事を持っていたが、休日などに手伝っており、母の緋紗もまたこのペンションの売りでもある陶芸教室を行っていて皆、家族のような付き合いだった。
直樹も緋紗も和奏のことは勿論生まれたときから知ってる。
そして優樹も、生まれたときから和夫と和奏の家族同然だった。
特に和奏は実の弟のように誰よりも四つ年下の優樹のことを熱心に面倒見ていた。
お互いに一人っ子であるためか家族として姉弟としてとても濃いつながりを二人は感じている。
「和奏。今日のデザート試食してみてくれ」
和夫は粉引きの小さな小皿にとろりとしたオレンジ色のムースを持ってきた。
「ん。さっぱりしてて美味しいね」
「うん。駿河エレガントって名前の甘夏だよ。ほんとは今の時期には食べられないんだぞ」
「へー。そうなんだ。すごく美味しいよ」
力強い眉と目を和らげて和奏はにっこり微笑んだ。
そんな表情をみて和夫は目を潤ませ、「美味しそうに食べるな」と、言う。
「やだ。最近すぐうるうるしちゃって。歳じゃないの?」
艶やかな笑顔でからかう和奏に和夫は頭を掻いて「そうかもな」と照れ臭そうにつぶやいた。
丸太小屋でできた温かみのある建物は、年月とともに重厚でどっしりとしたアンティーク感をも醸し出している。
周囲のモミの木やオーク類が異国情緒感じさせちょっとしたおとぎの国の家のようだ。
運営が始まった当初から優樹の父、大友直樹は林業組合員で仕事を持っていたが、休日などに手伝っており、母の緋紗もまたこのペンションの売りでもある陶芸教室を行っていて皆、家族のような付き合いだった。
直樹も緋紗も和奏のことは勿論生まれたときから知ってる。
そして優樹も、生まれたときから和夫と和奏の家族同然だった。
特に和奏は実の弟のように誰よりも四つ年下の優樹のことを熱心に面倒見ていた。
お互いに一人っ子であるためか家族として姉弟としてとても濃いつながりを二人は感じている。
「和奏。今日のデザート試食してみてくれ」
和夫は粉引きの小さな小皿にとろりとしたオレンジ色のムースを持ってきた。
「ん。さっぱりしてて美味しいね」
「うん。駿河エレガントって名前の甘夏だよ。ほんとは今の時期には食べられないんだぞ」
「へー。そうなんだ。すごく美味しいよ」
力強い眉と目を和らげて和奏はにっこり微笑んだ。
そんな表情をみて和夫は目を潤ませ、「美味しそうに食べるな」と、言う。
「やだ。最近すぐうるうるしちゃって。歳じゃないの?」
艶やかな笑顔でからかう和奏に和夫は頭を掻いて「そうかもな」と照れ臭そうにつぶやいた。