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イキ狂う敏腕社長秘書
第9章 【孤独の先にあるもの】
生理が来てホッと胸を撫で下ろした。
トイレで1人、しばらく泣いて動けなかった。
あれからずっと不安と隣り合わせだったから。
社長とは変わらない態度で接している。
雇われている身だということは常に自覚していなければならない。
日々全力で専属秘書として職務を全うしている。
さすがにまだ身体は求めて来ない。
怒ってるって上手く勘違いしてくれているから私も敢えて何も言わないし自然に身を任せている状態だ。
その間、ちょうどキスマークも消えたし社長以外の関係を堪能出来てる。
あの日の夜のことは明里さんには報告していない。
出来ることなら墓場まで持っていくつもりだ。
こうして妊娠していなかったのだから肩の荷は降りたけれども。
「あの、これ第3会議室で落とし物です。名前、カタギリと書いてあるのでエンジニア部の方かな…と」
エンジニア部にて、一番近くのデスクに居た女性社員に万年筆を手渡す。
「え、あっ……社員秘書っ…の方ですよね」
私を見るなりテンパってる…?
驚かせちゃったかな、新しい人っぽい。
正直、大勢いる社員の顔は覚えきれていない。
社員名簿を確認してカタギリさんを割り出したくらいだ。
エンジニア部のフロアを見て、少し懐かしい感覚に陥る。
総務部に居た頃を思い出していた。
「あ、あの、カタギリはただ今出ておりまして…帰ったら渡しておきます、ありがとうございました」
わかる……その態度。
私も総務部に居た頃は社長秘書ってだけで謙遜したもんだ。
まさか私がその立場になるだなんて欠片も予想出来なかったけど。
いつもポーカーフェイスで仕事してるわけじゃない。
笑顔になる事で親しみを感じてもらえたら嬉しいな。
「はい、では宜しくお願いします」
「は、はい…!」
フロアに残っていた社員数名も立ち上がり会釈してくれた。
いや、私、社長じゃないから。
同じいち社員だからね?
秘書って重い肩書きだな。
エレベーターで一緒になる他の部の社員たちも私を見るなり固まる。
「どうぞ、何階ですか?」
「は、8階お願いします、ありがとうございます」