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イキ狂う敏腕社長秘書
第10章 【溺れていく本能】
帰る直前までキスを繰り返し求めてくれるだけ与えてあげる。
というより、私自身も欲してるのかも知れない。
この温もりともしばしの別れ…かな。
髪を撫でて見送る。
「あの……僕の気持ち、伝わってますよね?」
スニーカーを履き終えたキミは真っ直ぐ私を見つめ返す。
「あぁ………うん、だいぶ」
笑って誤魔化すのはもう癖になりつつある。
不安そうに見つめるその瞳が何を訴えているのか気付かないフリしちゃうのはズルいよね。
手を握ってきては指を絡めてくる。
「美雨さんの気持ち……聞きたいです」
耳に髪を掛け冷静さを保つ。
そうか、キミは言葉にしないと不安なんだね。
フィーリングでは腑に落ちないタイプだ。
「え、私…?うん、好きだよ」
聞かれたら軽く答えるのも私のやり方。
知ってるでしょ?的なノリ。
「りょ、両想いって事で良いですか?」
その響きが何だか擽ったい。
そうだね、と笑う。
「じゃ、彼女……て事で?」
「え……?そうなの!?」
「えっ!?違うんですか!?」
「いや、展開速いなって思っただけ」
「すみません、タイミングとかわかんなくて……焦り過ぎました」
「あぁ………うん、そっか」
妙な沈黙……さすがにヘコんだか。
そうだよね、両想いなんだから付き合えるって思うのが普通だよね。
手放したくないけど変に期待されるのもやりにくい。
「今、本当に誰とも付き合う気なくて……仕事優先にしてたんだけど、湊くんと出逢って正直どうしたいのか自分でもわかんなくなってきてる……ごめんね、不安になるのもわかる」
考えがまとまんなくて焦ってるフリ。
想定外の答えでキミの方が焦ってるか。
手を握り返してキスする私はどう映っているのかな。
「でも、また次も会いたいって思ってる……今はその返事だけじゃダメかな?」
この距離感で上目遣いすれば大抵は堕ちてくれるよね。
曖昧に進んだ方が盛り上がるじゃない。
焦って答え出すモノでもないでしょ。