この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
イキ狂う敏腕社長秘書
第11章 【静かに狂い咲くように】
前方にたくさん荷物を抱えた女性社員が目に飛び込んでくる。
「それ、手伝いましょうか?」
そう声を掛ける私を見て彼女は安堵の笑みを浮かべた。
「あ、美雨ちゃん!久しぶり」
「重そうだね、半分持つよ」
彼女は唯一の同期入社で総務課に居た頃に仲良くしていた。
すぐに私が秘書課に移動してからはあまり会うこともなくすれ違いだったけど。
「秘書課はどう?何かもうキャリアウーマンって感じで毎日頑張ってるよね」
「そんな事ないよ、これ総務課まで運べば良い?」
「あ、うん、ありがとう〜何かこういうの懐かしいね」
「そうだね、やっと余裕出てきたとこかな」
廊下ですれ違う他の社員たちからの視線をバシバシ感じる。
秘書課がここで何してるんだ?ってな目。
同期のよしみで気さくに話す私たちを不思議そうに見てくる目も。
「何か総務課に居た頃の美雨ちゃん久しぶりに見れた感じする」
「えっ?」
「秘書してる時はビシッと決めて隙きがない感じだけど今は表情が柔らかいもん、仕事大変そう?無理はしないでね」
エレベーターのボタンを押して立ち止まる。
そうか、そう映ってたんだよね。
仕事を覚えるのに必死でポーカーフェイスの時は頭の中で常に次の仕事の事を考えていた。
だから難しい顔してたのかも。
一般エレベーターに乗り込む私を皆が避けてる気がする。
そんなに目立つのか、私は。
「ごめんね手伝ってもらって、戻らなくて平気?」
「うん、社長は今外出中だから」
気兼ねなく話してくれるのはもはや同期の彼女だけかも。
表情がコロコロ変わって見てて飽きない。
止まったエレベーター、乗り込むのに躊躇する他の社員たち。
顔を出し「どうぞ」と促すと焦って乗ってくる。
その中に最後に乗り込んで来た1人。
永田課長だ。
一瞬目が合って会釈した。
スッと手が伸びて階ボタンを押す。
やっぱり間近で見てもスマートな出で立ちで、少し離れて並んでる私たちが関係を持っているなんてこの場に居る誰もが驚く事実だろう。
「あ、そうだ美雨ちゃん、今度ご飯行こうよ、久しぶりに」