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イキ狂う敏腕社長秘書
第12章 【愛の循環】
昨日、明里さんから会食の後は私と会うから心配しないで…とメッセージが来ていた。
用意しようとしてくれたスイートルーム行ってみたかったけどごめんね。
お辞儀して出て行こうとしたら「真田さん!」と呼び止められ振り向くと足早に私の元へとやって来る。
こんな大きな声で呼ばれる事はあまりなかったから正直びっくりした方が大きい。
両手をギュッと前で握られ
「今夜どうしてもダメ?」と再々確認。
よっぽど来て欲しいらしい。
どちらが正解なのか。
このままま焦らす道か、根負けして従う道か。
後者なら一ノ瀬さんにドタキャンしなければならない。
コンペを勝ち抜いてきっとご褒美か欲しくて堪らないであろう彼氏と、断っても断ってもまだ引き下がろうとしない社長。
どちらの手を引くのが私にとって正解なのだろうか。
「本当に今日は……」
「水無瀬さんには悪いけど、俺は水無瀬さんとじゃなく真田美雨と行きたいんだよ」
こんな時のフルネーム狡くない?
“お前”でも“美雨”でもなく“真田美雨”
胸の奥が疼いてしまった。
「あの、どうしてそんなに…?」
普通の会食だよね?
そりゃずっと私が付いてたけど秘書が変わろうが何の差し支えもないはずなのに。
相手方の情報だって第2秘書もちゃんと共有してますよ?
「俺の隣はいつだって真田美雨だから」
え………何なのコレ。
言葉を見失う。
射抜かれた弓が一瞬の風と共に貫通したかのような感覚。
だけど妙に胸にストンと落ち着いて。
「美雨じゃないと俺……ちゃんと仕事出来ない」
ハァッ……と息が漏れた。
嘘………こんな時に泣くなんてどうかしてる。
一粒零れ落ちた涙は拭っても拭っても落ちてきた。
「すみません……すぐ止めますから」
火照る顔を何とか沈ませようと扇いだり甲をつけたりするも溢れ出す。
抱き締められて落ち着きを取り戻した。
取り乱した事を謝罪した上で心を決めた私は顔を上げたのです。
「本日はどうも貴重なお時間ありがとうございました」
「いや〜本当楽しかったよ、こんな綺麗な秘書さんとお話も出来て大満足だよ」
「いえ、とんでもないです、またたくさんお話聞かせてください」