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夏の終わりに
第1章 プロローグ
ヒュー……ドォンッ

暗闇の向こうで盛大な花火が打ち上がる。


ヒュー……ドォンッ、ドォンッ

パラパラと哀しげな音をたてて、それは消えていく。


「…っ、こんな……」

荒い息を飲み込んで絞り出しされた声もまた、鎮守の森が統べる闇の中へと消えていった。


ヒュー……ドォンッ

華々しく咲く花火が二人を照らして散る。
その一瞬の間だけ二人は見つめ合い、すぐに顔を逸らした。


ヒュー……ドォ、ドォンッ、ドドドォンッッ

体に受ける衝撃に怯えたように少女は乱れた浴衣を掻き寄せる。
咄嗟に駆け寄ろうとした青年の足元で、生い茂る草がカサリと音を立てた。

「ごめ…ん……、」

少女は俯いて首を左右に小さく動かした。


ヒュー……ドォンッ

花火がパラパラと哀しげに消えていく。



十六年間築き上げてきた二人の関係も、消えていこうとしていた。
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