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夏の終わりに
第3章 再会
車を走らせながら浩人は徐々に冷静になっていった。

駅で迎えを待っているのは、いつも浩人の後を追いかけていた幼い“ちぃ”ではない。
四年前の出来事の延長線上にいる“川辺千里”と言う一人の女性なのだ。


―――チロにぃたっ

舌足らずな呼び方は、いつしか鈴が鳴るような可愛らしい声になり、やがて柔らかくて甘い音色へと変わっていった。

大学へ進学を決めた浩人に「離れたくない」と泣きついた女の子は、いつの頃からか浩人の後を無邪気に追いかけなくなり、野原を走り回るのも止めていた。
浩人の知らないところで幼い髪型や服を卒業して、華奢な体つきは緩やかな曲線を描くようになっていた。


―――ヒロ兄ちゃん?

首を傾げた十六歳の千里に、二十二歳の浩人はドキリとさせられた。

すっかり変わってしまった幼馴染みに戸惑い、妙に速くなる鼓動に動揺した。
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