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夏の終わりに
第25章 エピローグ
誰があやしても泣き止もうとしなかった生後二ヶ月の千里が、浩人の指を掴んだ途端ににっこりと微笑んだ時のことを、三人は昨日のことのようにはっきりと覚えていた。

その後に、浩人が千里の手を握り返して弱々しく微笑んだことも。

微笑み合う浩人と千里を見つめながら、康人と美也子は静かに泣いた。二人をなぐさめながら、清吾と千穂も涙を拭っていた。


二十年前、康人の兄が事故で命を落とし、その数ヶ月前に彼の妻が家族を捨てたこともあって、康人と美也子は躊躇うことなく甥っ子を自分達の息子として迎え入れた。

浩人は相次ぐ両親との別離に塞ぎ込み、誰に対しても心を開こうとはしなかった。
村の人達が浩人の実母を悪く言い、浩人を邪険に扱ったのも、おそらくは原因の一つだっただろう。
カズや他の子供達が遊びに誘っても、浩人は黙って首を横に振るばかりだった。


その浩人が千里の笑顔に応え、微笑んだのだ。
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