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夏の終わりに
第5章 約束
千里は胸が締めつけられたように痛んだ。

外から聞こえてくる虫の音を掻き消すように浩人の静かな息遣いがする。
最後に再び唇が合わさって、浩人は部屋を出ていった。


引き戸が閉まると、千里はゆっくりと目を開けた。溢れ出る涙が目尻を伝い、耳を濡らす。それを指で何度も拭った。


千里には浩人の考えていることが分からなかった。

笑い合えた直後には千里を無視するように避けて、車内でも何も話してくれなくて、それなのに家に着いたら再び話しかけてきて、また距離をとられて……


そして、今の出来事。


もし起きていると知られたら、どうなっていたのだろう。
浩人はそれでもキスをしてくれただろうか。

千里は混乱する頭で考えてみたけれど、答えは見つかりそうになかった。


はっきりと分かるのはひとつだけ。
今夜はもう、微睡むことさえ出来そうにない。
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