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夏の終わりに
第10章 休息
川辺家の窓を全て開放して空気を入れ換えると、千里は一階の和室にある桐ダンスの前に座った。
一番下の抽斗を開けて、躊躇いがちにその中の一枚に触れる。

丁寧に折り畳まれた千穂の浴衣に混じり仕舞ってあるのは、四年前の花火大会で着た浴衣。


―――ちぃには、まだ早いわよ。

一目見て気に入り、花火はこの浴衣で行くと意気込んだ千里に、購入に付き合ってくれた千穂はもっと可愛らしい浴衣を勧めてきた。
それでも千里は、背伸びをしたくてこの浴衣を選んだ。


夏の終わりに打ち上がる花火を浩人と二人で眺めるのは、いつの頃からか毎年の約束になっていた。けれどそれは、浩人にとって小さな幼馴染みの子守をするようなもの。

千里はその関係を変えたかった。


もう子供じゃないと気づいて欲しかった。
少しは、浩人に見合う女性になりたかった。
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