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BeLoved.
第35章 【hey my friend.】

わたしの親友とはいえ、赤の他人に試された。
それが気に障った。

『わたし』に言っているのではない。
彼は自分の気持ちを吐露しているだけだ。

でも、わたしは声を出せない。
それは彼が怖いからじゃない。

くだらないやきもちを焼いたうえに、あらぬ疑いを持った自分。戻れたら、その時の自分を殴り付けたい。
それほど、自分が恥ずかしくて情けなくてたまらなかったから。


思い返せば高校の入学式。
一人でいたわたしに声をかけてくれたのが紫だった。それが出会い。付き合いの始まり。

「あの時の未結、すごく不安そうな顔してて。ほっとけなかったから」あとから笑顔で教えてくれたっけ。

おばあちゃんを亡くし、職を失くし、住む所を無くした時だって「うちに来なよ!」と真っ先に言ってくれたのは、彼女だった。
今わたしの手の中にあるハンカチも、紫の誕生日にわたしが贈ったもの。三年以上前なのに、今も使ってくれていたんだ。

紫は昔から…ううん。今だってわたしを気遣ってくれる。大事に思ってくれている。

それなのに、わたしは。
…本当にごめんね、紫。



「未結、おいで」
「っ…あ…」

呼び掛けの直後、伸びてきた長い腕。軽々と抱き上げられ、彼の足の上に乗せられて。両足を助手席の方に向けた横抱きのかたちにされた。

「嫉妬したね」
「!」

耳のそばに寄せられた唇からの低く甘い囁き。
今のわたしには突き刺さった。

否定することは許されない。
裁かれなきゃいけないんだ。

誰に対してのものなのか?そんな強迫観念にも似た思いが脳裏をよぎる。言葉がでない。ただゆっくりと頷いた。


「…ならいいよ。それで充分」
「、ふぁ…っ」

濡れた舌先が、耳の節をなぞった。
全身に伝わるぞわぞわした感覚に声は漏れる。…彼が好む、甘ったるい声が。

「…俺と流星が紳士のフリした理由と、俺がさっき未結に怒った理由。同じだよ。わかる?」

囁きのあと、舌先が耳の中に入り込む。動かされる度に卑猥な水音が響き、ぴくん、ぴくん、と上体は小さく跳ねた。

「んぁっ…、や……あ…っ」

首を小さく横に振り目を閉じる。
彼の答えは、脳に直接響くようだった。

「未結のことが好きだから」
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