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BeLoved.
第44章 【彼の根底にあるもの。2】
朝食も終わりを迎え、片付けを始めた頃。廊下の方からがさごそと音がした。不審に思い顔を向けると…ドアがゆっくりと開いた。入ってきたのは…
「ただいま」
「っお、おかえりなさい?!」
…麗さまだった。帰りは早くても昼、もしかしたら夜かもと聞いていたのに。
メールのこともある。席でお茶を飲んでいた流星さまも、思いっきり不信感に満ちた眼差しを向けていた。
「ずいぶん…お早かったんですね」
「車飛ばしてきたから。あとこれ、はい」
手渡されたのは、コンビニのレジ袋。覗き込んだ中身は、透明なプラスチックケースに入れられた、二切れ入りのショートケーキだった。
「これ…」
「買ってきたの。みゆみゆと食べたくて」
「みゆみゆ?!」
…流星さまとわたし、揃って声を上げてしまった。
─────────────
「…麗お前ほんと、なに?どした?頭打った?」
「は?」
流星さまの指摘に、麗さまは普段通り…いや、普段以上の冷眼を向けた。敵意剥き出しの。
「こちとら死に物狂いで用件終わらせて、無理矢理休み取ってきてんだ。テメーなんぞと話してる暇ねぇんだよ。消えろ」
麗さまは言い放った。冷眼を向けたまま、とてもとても…その…ドスの効いた口調で。
しかし流星さまには慣れたもの。売り言葉を買うことなく、あくまで普段と変わらない口調で続けた。
「…じゃなくてさ、何があったかって聞」
「みゆみゆ、ご飯食べたいっ」
流星さまの言葉を遮り、麗さまからはさっきとはまるで別人の…にこやかで屈託のない表情がわたしに向けられた。…流星さまの顔が引き攣っているのが見える…
…どうなってるの…?こんな麗さま初めてだ…。さすがに流星さまも困惑してしまったようで、右手で目元を押さえ項垂れてしまった。
「…未結どーする?こいつ病院送りにしよーか」
「だだだだだ、だめですカラネ?!」
指の隙間から垣間見えたその目は…本気だった。
もう流血沙汰は勘弁して下さい…。