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第44章 【彼の根底にあるもの。2】

それから何をするにも…麗さまが側にいる。隙あらば腰に手を回し抱きついて、密着してくる。朝食なんか膝上に乗せられて…

「みゆみゆ、はい、あーん」
「…あー…ん」
「俺にもして?」

…この有様。味なんかわからなかった。

とにかく動けば後をついてくる。立ち止まると、背後から抱きついてくる。延々その繰り返し。

…正直、とてもやりづらい。それに加え…

「大好きだよ…」
「…っあ…」

隙あらば(無くても)うなじや肩口にキスをされて、嫌でも身体が反応させられてしまう。

「ん、や…っ!…舐めな…っ、お仕事…できな…っ」
「…ん?…ん、大丈夫。俺は平気」

訴えても全く通じない。
午前中はそんなやり取りがずっと続いた。もう十二時を回ったのに、仕事は普段の半分も終わっていない。

…ここは流星さまを見習って、はっきり言った方がいいのかな。
…うん、そうだ。その方がいい!

「ねえみゆみゆ…」
「──あの!」

意を決し、彼をまっすぐ見上げ声を張り上げた。

「いい加減離れて下さい!動きづら」
「…俺のこと嫌いなの?」

───うぜえ!

?!い、 今、流星さまの声が聞こえた気が…って、そんなわけないよね…

まるで捨てられた仔犬のような不安げな表情の麗さま。…こんな表情も初めて見た。この人こんな顔できたんだ…(ごめんなさい)。
とにもかくにも、ありえない空耳とありえない問いを打ち消すため、首を大きく左右に振った。

「ちちち違います!ただ…っ」
「違うならいいよね。俺離れたくないもん」


……だめだ。


身体に回されている腕に力が込められ、にっこりと無邪気な笑顔を向けられて。…ああ、こんな顔もできたんだ…かわいい……じゃない。とにかく、観念したのはわたしの方だった。
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