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想い想われ歪なカタチ
第3章 3
「流牙!! 何よこの服!!!!」


怒りで顔が赤く染まっているのが分かる。
大声で怒鳴ると、流牙が今日で三度目の笑みを漏らした。


「くっく、よくお似合いですよ、お嬢様?」


「なんで私がメイド服なんか着なきゃならないのよ!!」


そう、これは紛れも無くメイド服。
使用人の服じゃないの!何で私が着てるの!?
キンと音の立つほど流牙をにらみつけて、私は声高に叫んだ。


「悪ふざけが過ぎるわ!! はやく私のちゃんとした服を用意なさいよ!
 でないといい加減、怒るわよ!?」


真っ赤になって怒鳴りつける私を物ともせずに、
流牙はいつも掛けてる眼鏡を優雅な動作でついと外して言った。


「馬鹿か、おまえ」


・・・・え? 今、何と? 
私は瞬いて、言葉を失った。
ガラス越しではない剥き出しの瞳で、流牙は私に冷たく言い放ったのだった。

私は、ぽかんと口を開ける。


「おまえ、まだ自分の立場がわかってないようだな」


おまえですって?? 


「まずはこれを聞け」


流牙はポイ とパールピンクカラーの携帯を投げてよこした。
私の携帯だ。
待ち受け画面には、留守録有りのマークが出ている。


『保存されているメッセージが一件 あります。メインメニューです。メッセージの再生は1・』


私は親指で1をプッシュして耳に当てる。
歯切れの悪く、聞こえてくるのはパパの声。


『伊吹・・・私だ。パパだよ。すまない。一緒に行くつもりだったんだが・・・
 そのうち迎えに行くから、しばらくの辛抱だ。待ってておくれ。
 必ず迎えに・・(~航空 ・・377便の搭乗・・・)もう行かなくては。
 また連絡する。プッ

 ―――メッセージをもう一度再生する場合は1、メッセージを消去す』


そこで携帯は取り上げられた。流牙がボタンをプツと押すと、
その手の中で、無機質な女性の録音テープの声が流れた。


『メッセージを消去しました。メインメニューです。
 保存されているメッセージはありません。』


「ちょっと!! 勝手に何すんのよ!」


「もう聞いただろ? 二度も聞く必要があるか。
 バックに空港のアナウンスが流れていただろう。
 おそらく高飛びでもしたんだろう。

 お前を置き去りにしてな」
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