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想い想われ歪なカタチ
第2章 2
窓の外は、肌を刺すような冷たい北風が吹き荒れてる。
格子に嵌ったガラスを微かに揺らすけど、屋敷の中には決して入ってこれないでいる。
屋敷の中は、備えられた優秀な暖房器具で常に暖かく、冬の寒さとは無関係でいる。


「三時をとっくに過ぎちゃったじゃないの!! お茶はまだ!?」


馬鹿ッ広い洋館の二階の踊り場の手すりから身を乗り出し、一階のホールに向かって私は叫ぶ。
声は光沢を放つ大理石に反芻され、僅かに連鎖して響く。

映画かドラマの舞台になりそうな、精密に設計され建築された豪華な洋館。
実際何かの撮影に使われたことがあるらしいけど、興味ないから忘れた。
生まれた時から住んでいると、豪華なのも広いのも、ただ鬱陶しいだけ。

この屋敷は、誰だって知ってる有名企業、オキ・コーポレーションの私邸。
オキ・コーポの歴史は決して古くはない。
お祖父さまが一代で築きあげた会社だ。
お祖父さまが現役を退いたのは五年くらい前かな。他界したのは一年前。

とにかく、
私は現社長一人娘、隠岐伊吹(おき いぶき)で、
パパは滅多に帰ってこないから、専ら屋敷の主は私。


「すみません。お嬢様、今すぐお持ちいたしますので、お部屋でお待ちください」


メイドは私の声に弾かれたように、いそいそと
銀製のお盆に茶器を並べて、緩やかに螺旋を描く階段を上る。

私はふんと鼻を鳴らす。
流牙だったら、決まった時間に、遅れることは一秒だって無いのに。

ここ数日、私の機嫌は、最低の、最悪の、最強の、最前線で悪い。

“超”なんて安っぽい言葉だったら、何回連打しても足りそうにない。

学校は適当に理由をつけさせて休みにした。
役にも立たない学問を習って、行儀作法を叩き込まれて、
同じお嬢様面したクラスメイトと、
にっこり笑って「ご機嫌いかが?」なんて、オシトヤカごっこをやる気にならない。
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