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想い想われ歪なカタチ
第1章 1
酒浸りの父が、俺達をさんざん殴った夜、
ようやく万年敷かれた寝床に仰向けに寝転んだ、父の深い鼾を確認して、
母と俺は用意した荷を纏めると家を出た。
タクシーに飛び乗って、着いた先のマンションの、俺達を部屋に入れて迎えた見知らぬ男は、
母を笑顔で抱きとめたけれど、俺を見るとあからさまに嫌な顔をした。
その日の夜中に響く、母の声はうるさかった。布団を深く被って無理矢理寝た。
二三日もせずに、男は俺を殴るようになった。
母は俺をつれて、どこか遠い町へ来た。
ファウンデーションで覆い隠しても、その青ざめた顔で なんとなく分かった。
母は俺を捨てて、あの男の元に戻るのだ。
母が父を捨てたその日に、こうなることは予感していた。
母の中で、父の要らなくなる日が来たのなら、
俺の要らなくなる日もくるんじゃないかって そう思えたから。
俺は、せめて最後まで、純粋な子供を演じてやろうと思った。
ここで言われた通り、待っていようと思った。
身を裂く寒さは構わない。
絶え間なく狂う飢えも気にしない。
嘘か真実かもどうでもいい。
母は迎えに来ると言ったから。
俺は ここで 待っている。
ようやく万年敷かれた寝床に仰向けに寝転んだ、父の深い鼾を確認して、
母と俺は用意した荷を纏めると家を出た。
タクシーに飛び乗って、着いた先のマンションの、俺達を部屋に入れて迎えた見知らぬ男は、
母を笑顔で抱きとめたけれど、俺を見るとあからさまに嫌な顔をした。
その日の夜中に響く、母の声はうるさかった。布団を深く被って無理矢理寝た。
二三日もせずに、男は俺を殴るようになった。
母は俺をつれて、どこか遠い町へ来た。
ファウンデーションで覆い隠しても、その青ざめた顔で なんとなく分かった。
母は俺を捨てて、あの男の元に戻るのだ。
母が父を捨てたその日に、こうなることは予感していた。
母の中で、父の要らなくなる日が来たのなら、
俺の要らなくなる日もくるんじゃないかって そう思えたから。
俺は、せめて最後まで、純粋な子供を演じてやろうと思った。
ここで言われた通り、待っていようと思った。
身を裂く寒さは構わない。
絶え間なく狂う飢えも気にしない。
嘘か真実かもどうでもいい。
母は迎えに来ると言ったから。
俺は ここで 待っている。