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想い想われ歪なカタチ
第5章 5
何度も何度も 心で唱えていた言葉を、私はやっと吐き出した。


「あれ、すごく、すっごくキレイだったから、取り出して、触ってみたかっただけだもん!
 手がとどかなかったから、背伸びして取ろうとして、
 そしたらいきなり倒れててきて床に落ちちゃったんだもん!
 あのガラスのぴかぴかしたやつ、パパが大事にしてたの知ってたから、
 少しだけ手にとってよく見たら、すぐ元に戻すつもりだったもん・・・。ほんとうだよ?
 ほんとうなのに・・・パパ信じてくれないの。
 パパがこの前、わたしとの約束破ったから、
 わたしがハライセにパパの大事なもの、壊したんだって思ってる。
 ・・・ほんと に、違うんだよ わたし そんなことしようとしたんじゃ ないもん・・・・
 なのにパパは・・・ わたしの こと、・・・信じてくれない・・っく えぐ・・・・ふぐ・・・」


「お嬢様・・。どうか泣かないでください」


「違うもん! 泣いてなんかないっ・・ぅぐ・・・もん!! 」


言葉を、信じてもらえないのは悲しい。
自分自身さえ否定されているように感じるから。

泣いてるって、知られてしまうのは恥ずかしい。
泣くことは、酷くみっともない事だって思ってた。
だから私は、わざと泣き顔をつくることはあっても、本気で泣くことはしなかった。
ましてや流牙なんかに、こんな場所でずっと泣いてたなんて 気づかれるのは嫌だった。

私はそんな、どうしようもない子なんだって、流牙に思われるのが嫌で。

声を押し殺して 泣き声を我慢しているときに限って、 なんで しゃっくりが出ちゃうんだろう?
だから酷く泣きじゃくってるように聞こえてたんじゃないかな。
実際もそうだったんだけど。
流牙の耳に届いた言葉も、もっとあやふやだったと思う。
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