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想い想われ歪なカタチ
第5章 5
「私は信じていますよ」


決して大声じゃないんだけど、どこまでも響くようなどっしりした声で流牙は言った。


「・・うっく・・・ぶしゅ。・・えっ・ひぐ・・・ほんと? 
 りゅ・流牙はわたしのこと、信じて・ぅっく、くれる?」


すでに何メートルも引き出した 柔らかな色つきのトイレットペーパーで
瞳から染み出た塩水で、ぐしゃぐしゃになった自分の顔を拭きながら私は聞き返した。


「勿論です。
 お嬢様は人が大事にしているものを、わざと壊したりなさる方ではありません。
 それを私は知っています。
 ですからもう、ここを出て、旦那様に一緒に謝りに行きましょう?
 二人で言えばきっと分かってくださいます。ね?」


私の欲しかった言葉は、全部 流牙が与えてくれる。
怒られたときより、優しくされたときのほうが 余計に涙があふれるのはどうして?
低くて澄んでる。流牙の声は 揺れながら、私の心を洗ってくれる。



・・・・



何をまた 昔を思い出してるんだろう、私・・・・

もう違うのに。

今、外に居る流牙は 私の知ってる流牙じゃない。
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