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ひととせの自由
第3章 郷に入っては俺に従え
足元に転がる、艶かしいベビーピンク色の、それ。
それに目が釘付けになったまま、硬直したままの私。
『突き刺せ』。…なに?聞き違い??
「…ぇ、先生、あの…」
「田中ー、もういいよ」
私の声を遮り、四季先生は田中くんに声をかけた。
いや……違う。四季先生は田中くんに『命じた』。
「、はい」
あんなに一心不乱にむしゃぶりついていたのが嘘みたく、田中くんは即座にお姉さんから離れ、脇に避けた。
開けたその先には……
「ほら、ひととせちゃん。田中くん準備してくれたから」
おいで、と微笑む四季先生。その真ん前には、大股おっぴろげで荒い呼吸を繰り返すお姉さん。
「……ぃや、…ぁのー…ハハ…えっとぉ…」
足元に転がる、艶かしいベビーピンク色の、それ。
それに目が釘付けになったまま、硬直したままの私。
(辛うじて愛想笑いは浮かべられたけど…全く意味ない)
コレを何処に『突き刺す』のか。
んなもんわかってる。わかってるけどさぁ…。…ねぇ。
と、急に視界からベビーピンク色のそれが消えた。
…田中くんが拾い上げたのだ。
「ひととせさん」
「はひっ」
しかもそれを私にずずいっと差し出してる。ついさっきまであんな痴態を繰り広げていたとは思えない、無表情で。
「先生がお呼びです。どうぞ」
「ハイ……」
半端ない威圧感。刺すような視線。有無を言わさぬ空気。それは私に『拒否権は無い』ってことを改めて思い知らせてくれた。
「しししし、失礼します…」
「そんな畏まらなくてもいーよ。大丈夫」
四季先生は相変わらずの優しい声と笑顔。なんなのこの人…。一方お姉さんは、「せんせぇ、まだぁ?」とかなんとか鼻から出したような甘ったるい声を響かせてる。
…手に『それ』を持った私が、膝をついてすぐ側に居ることにも全く気付いていない(というか、お姉さんの世界にはハナから先生しか居ないのだ)。
〰〰あああ、もう。どうしよう。何でこんなことになってんの?…まぁ借金返済のためだけどさ…
〰〰えぇい、しっかりしろ、ひととせ!!
こんなもん、処置と同じだと思えばいい!!
それこそ、注射よ、注射注射!!!
意を決した私は『それ』を握り締め、お姉さんの『その場所』に向き合った。そしてアッサリと返り討ちを喰らったのだった。