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BeLoved.【蜜月記】
第16章 【縮】BeLoved.

小さくなった彼が、わたしたちの背後にいた。
いや背後というか…足元に、仁王立ちしていた。
眉間にシワを寄せた仏頂面で。
「り"ッ?!い、いつからいらしてたデスカ!?」
「こいつが"セックスしよう、未結"てキメたちょい前から」
げし、と麗さまの腿の裏あたりを蹴ったくらいにして。
察するに、蹴りは何度も入れられていた様子。
密着していたのに…それにも気付かなかった。
「こ ど も は寝る時間だろ」
麗さまが痛みよりも煩わしさで制止したことは、容易に想像がついた。
彼はわたしをシンクと自分の間に閉じ込めたまま、流星さまの頭をわしゃわしゃと撫でた。戒めと…皮肉を込めて。
「…そーゆーのいらねーんだよ、ヘタ麗」
その手を払い除けた小さな彼は。鋭さは不変の三白眼で麗さまを一瞥した後、わたしの左腕を引っ張り寄せた。
「今日俺の日だから。こいつ連れてくわ」
「…っと…」
普段ならすんなりと掠め取られ、胸の中に抱かれるのに。
今は重心が左に少し傾いただけで、わたしの身は麗さまの腕の中のままだ。
「危ねぇだろ。引っ張んなボンクラ」
ちょっと待ってろ、と窘めながら。麗さまがゆっくりと後退し、わたしを解放してくれる。
すかさず、小さくなった彼がわたしの腰に腕を回す。…普段肩を抱き寄せるのと、同じ動きで。
「なに麗お前、やけに素直な。何か企んでんの」
「…いや、なんかかわいそうになってきたから」
「あ"?!誰が?俺がか!?!」
「テメー以外居ねぇだろ。…俺ちょっと出てくるね。未結、おやすみ」
ご褒美は明日ちょうだい──去り際、そんな註文付きで。麗さまはわたしにキスをした。わたしの、唇に。
…流星さまに、見せつけるように。
「麗お前さんざ笑っといて"かわいそう"ってなんだよ!?!オイ、待てって!話終わってねーぞ!!」
怒りの咆哮も麗さまの歩みを止めるには至らず、やがて彼の姿は玄関ドアの向こうへと消えた。
「り、流…、お部屋、お部屋行きましょ!ね?!」
討ち捕らんとばかりに駆け出しかけた小さな彼を無理くり宥め。とりあえず台所から一番近い、わたしの部屋へと連れ込んだのだった。

