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BeLoved.【蜜月記】
第16章 【縮】BeLoved.

「オイ」という掛け声と共に、麗さまが流星さまの後ろ頭を…引っぱたいた。
「痛ッッえ"!れーお前バカられーの?!舌噛んらわ」
「バカはテメーだよ。時間」
突きつけられたスマホの表示時刻は、午前6時。…交代の時間だ。眉間を寄せ。果たして流星さまはわたしの上から退いたのだった。
「ぅーか、お前はカラダなんろもねーの?」
「うん。全然」
「なんぇ?次はお前ら縮むのがお約束だろ。つまんねー」
「知らねぇよ。未結、おいで」
やりとりの最中、立ち上がった麗さまに抱き上げられて。ベッドに胡座をかく流星さまを見下ろす格好になった。
奇しくも昨日と同じ目線。違うのは彼の大きさ(…なんか変な言い方だけど)。──その時ふと、泣きそうになった。
華奢な体、動きや仕種、表情、抱きしめた時の柔らかさ。きっともう二度と会うことはないだろう、小さくなった彼への慕情を覚えたから。
ご本人的には修羅場だったに違いないけれど…もう少し、一緒にいたかったな…
部屋を出るべく踵を返した麗さまによって、流星さまに背を向けた…直後。
「あ、そーだ。オイ、麗」
とてつもなく嫌な予感のする呼び止め声と、それを肯定する一言が放たれた。
「お前が俺のこと"かわいそう"て言ったの、忘れねーから」
肩越しに見たのは、漆黒の瞳。射抜かれてしまいそうな鋭さは、小さくなった時も不変だったけれど。
今は……威力も迫力も違う。
甘ったるい慕情なんか一瞬で消滅した。
…けれど。
「お前これ以上俺に沼ってどうすんの?」
確実に突き刺さっただろう威圧と眼光を、揶揄で打ち返すのがこの御方。…さすがだ。
「ていうか、それ言うなら昨夜テメーが俺を7回蹴ったのも、忘れてねぇからな」
「うーわっ!そーだそーだヘタ麗お前そもそも器が小っせーんじゃん!そりゃ体小さくなってる場合じゃねーわな」
「…と、とりあえず朝食用意しますね…っ」
──果たして。理由も理屈もわからない、まるで奇跡のような体験をした我が家は。理由も理屈もわからぬうちに、元の日常を取り戻したのだった。
「ありがとな、未結」

