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BeLoved.【蜜月記】
第16章 【縮】BeLoved.

小さくなった彼をベッド縁に腰掛けさせ、ドアを閉めた。
ふたりきりの密室。…さて、どうしようか…。
ドアとにらめっこしたまま立ち尽くしてしまう。
連れ込んだは良いものの、後の事を全く考ていなかった。
ちら…と彼の方を見やれば。まだ肩で呼吸している。
表情は…わたしの目線より下にいるうえに、俯加減で、組んだ両手で額を覆っているから判らないけれど。
「あ…な、なにか飲み物お持ちしますね!」
あたたかいものでも口にすれば、少しは落ち着けるかもしれない。ドアノブに手をかけた矢先、唐突に「あのさ」と声をかけられた。
「俺、窮地には強いと思ってたんだよ」
「え…」
「修羅場もそれなりにくぐって来たし」
いつの間に彼の手の位置はずれ、瞳が見えている。だけどその視線は…わたしを見てはいない。
「全然ダメだったわ」
「…あぁ」
彼の言わんとしていること。恐らく今現在彼の身に起こっていることについてだろう。…いや、でも。
「仕方ないですよ…」
わたしは本心からそう返した。だってそうだ。
身体が縮むなんて、平静でいられる訳がない。
いくら感覚が少しズレ…もとい。独特な彼だって、例外では無いはずだ。
「…悪ぃ、ちょっと隣来てもらっていい?」
ほら。こんな申し出をしてくるくらいに。
僅かでも気が晴れればと願いつつ、密着せずとも離れすぎない距離を意識し、腰を下ろした。
…つむじが見える。この期に及んでもかわいいと思ってしまった自分を心の中で蹴飛ばしていると、ふいに彼は「見て」と片方の掌を差し出した。
「ほら。俺いま、子供なんだよ」
「…え?」
…確かに、今わたしの眼下にあるのは、まごうことなき子供の手だ。通常(?)の彼のものに比べたら、大きさは半分以下。…かわいらしくてたまらな…あぁ、だめだめ。
「足もさ。こんなだよ」
ひょい、と振り上げられた、華奢な足。
通常の彼はおろか、わたしよりも細く小さい足。
…模範解答がわからない。けれど彼は構わず続ける。
「さっきもさ、俺全力だったんだよ」
「さっき?」
「麗蹴った時。野郎、びくともしなかった」
そこで彼は、初めてわたしに視線を向けた。
普段の鋭さは微塵もない…顫動に満ちた瞳。
「…な?俺いま、"子供"なんだよ」
「…!」
──裸見られたくなかったんだよ
彼と『彼』の言葉の真意が理解できた瞬間だった。

