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誘蛾灯
第6章 入るな危険
 ニッコリと笑って立ち上がった美世子の姿が奥に消え短い挨拶を交わす声がすると全裸の母娘を後ろに従えて戻ってた。二人は与えた部屋から命令通りその姿で調教部屋を訪ねてきたのだ。
 「はじめまして。奥様、咲子様、初巳様。浜野美江と申します。これは娘の」
 「樫・・・浜野夢華です。」
 未だ慣れないのだろう樫村の姓を名乗り掛ける夢華に美世子は微笑み掛ける。
 「こんばんわ。翔琉の妻の西東美世子よ。」
 「愛人の梅崎咲子。」
 「愛人の阪口初巳よ。」
 事前に教え込んであるので愛人だの妻だのと言われても二人に動揺はない。
 「貴女達が私の代わりに翔琉様の赤ちゃんを産んでくれるのね?」
 「はい。奥様。ご主人様の子種を頂き孕ませていただきます。よろしくお願いします。」
 「わ、私も翔琉オジサンの赤ちゃん産みまちゅ。」
 気負いすぎて語尾を噛む夢華に三人はコロコロと笑いだす。
 「貴方が急に子供を欲しがった理由がわかったわ。」
 「本当に。この可愛さは反則よね。」
 「夢華ちゃん。私の事は初巳ちゃんって呼んでね。オバサンなんて言ったら泣くわよ。」
 「あ、それなら私はサキちゃんね。」
 「二人とも。私を差し置いて何言ってるの?この二人はオバサンとオバアチャンでいいから。私はみっちゃんて呼ぶのよ。」
 あっという間に仲良くなるのはいいが何が初巳ちゃんにサキちゃんにみっちゃんだ。いい歳して何ブリっ子してんだがか。だったら俺もカッ君とかカー兄ちゃんて呼んでくれよ。誰にも聞こえない心の中での叫びが虚しく消えていく。

 それから一年半。マンションから昼夜の区別なく赤ん坊の元気な泣き声が聞こえる。美江の産んだ6ヶ月になる男の子翔馬と夢華の産んだ2ヶ月の女の子琉衣の声だ。
 二人の天使の世話は手すきの出産経験者の便女が代わる代わる見てくれている。
 子を産んでくれた美江と夢華には正妻、愛人に次ぐ側室という便女の一つ上の位を設けた。
 翔馬と琉衣が成人する頃には俺も古希を越えている。二人の成人式、結婚式が見れるか心配になってくる。
 まあ、何とかなるだろう。

 
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