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Secret space
第8章 8
 紗織は自分の後ろから伸びて臍の上あたりで組まれた手を見つめた。
これが男のものなのかと疑うぐらい、指が長くて綺麗な手だった。

父の オイルのこびり付いた黒い手を見て育った紗織には
男は皆、節くれだってごつごつした手をしているものだとばかり思っていた。


「言っておくが、お前の両親が後になって いくら金を積んだところで
 俺はお前を返す気など更更無いからな。 期待するなよ」


(期待するもなにも・・・・)


男が紗織の真っ直ぐな髪に、鼻を埋めながら囁く。
風呂に入ったとはいえ、自分の匂いを嗅がれるその行為は、
何だか恥ずかしいものがある。


「・・・・なんで 私なの?」


紗織はついに、ずっと聞きたかった疑問を口にした。


「お前がお前であることに理由が要るのか?」


「違う・・・そういう意味じゃなくて!わ!
 待ってッってばッ・・・ん・・・ッ」


男の手が、紗織の懐に分け入って、その胸を両手で押し包んだ。
胸の先端の色づく突起が男の指と、その間で僅かに擦れあう。


「この状態でも話ぐらいは出来るだろう。
 それに 違いはしない」


「いや! 手、やめてよ・・・ずるい

 あなたまるで私のこと・何もかも知ってるみたいなの に
 あっ・・私、あなたのこと何も知らない・・・
 ・・ぁっ・・。教えてくれてもいいじゃ ない・・・ッ・・」


胸の膨らみをふにふにと揉み解されると、
紗織の呼吸は勝手に乱れ始める。
男の手が紗織の形を確かめるように何度も撫で回しては
その指先に力を込める。
首筋に、キスをされるとぞくぞくと 背中が仰け反る。
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