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第8章 8
「お前が あれで俺を先にいかせたら、勝ちだ。
 逆にお前が先にいってしまったならば負け」


「なっ・・・なにそれ・・ あれって何・・」


「そんなこと、決まっているだろう?」


「・・・」


赤面して眉根を寄せる紗織を面白そうに男が見る。


「ハンデをつけて、俺は手しか使わないでおこうか?
 それにしばらくは何も手出しをせずにおいてやろう」


「えっと・・・じゃぁ・・、 口で しろってこと・・・?」


「使っても構わないというだけだ。
 ・・・何だと思ったんだ?」


「なっ!! 私、そんなこと!! 
 しっ・しないから!! 絶対 」


「じゃあ止めておけ」


男が素っ気無く言う。


「これでお前は永遠に、俺を知る機会を失ったわけだ。
 ああ、どうせお前はすぐイクからな。
 してみたところで無駄だったか」


「何、言って・・ッ
 無駄かどうかなんて、やってみなくちゃ分からないじゃない!」


「何だ、やるのか?」


「やるわよ、そのくらい・・・」


 売り言葉に買い言葉。
引っ込みのつかないその場の勢い。
睨み付ける紗織の視線を吸い込んで、男が変わらず微笑を返す。


「負けたならもう、余計な口答えは許さないからな」


(・・・何だか・・・ものすごーく上手く乗せられた気がする・・・)


冷たい汗がたらたらと額に落ちてくる気がした。
気づいた時にはもう遅い。


(もういいわよ、やってやろーじゃないの。
 別に・・一度はしたこと あるんだし)
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