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第8章 ８

「・・・やあ　ああん・・・はぁ・・ああっ
　ああん・・・か・・はふ・・・ひゃあ・・・あああ・・・んふ・ぅ・ああ」


　絶え間なく連続して
お互い迸る快感の源を　打ち付けては擦りあわせ、甘美な疼きをぶつけあう。
衝突する　その度に　紗織の脳裡にざぁざぁと　火花が散らばり、身体が溶け合う。
再び外で　一斉に激しく落ちる雨粒が空中で、降り注ぐ快感の火矢に変化して
幾つも紗織を貫いてはその身を焦がす。

本能のままに躍動する二人の接合部に、溢れた蜜が撹拌され
じゅぶじゅぶと　泡立っては卑猥な音を響かせる。
暗い畳の部屋の中で　激しい雨音と混ざり合う。


「ふぁあ・・あ・ああああッ・・・・あっ・・あああああッッ・・・・
　
　・・・・・っ・・・・ハッ・・・・く・・は・・・ぁ・・・・・・・ッ」


男は、自分にしがみ付いてはかくかくと、意識を飛ばして身をうち震わせる紗織を
しっかりと抱きとめて、その深い体内に熱い体液を撃ち放つ。

そのすべてを終えた後、
荒い呼吸が元に戻っても、頭の中がぼぅとして、何も考えられずにいた。
ぐったりと　身を横たえた紗織を、男が抱き寄せて眠りにつく。

　男の温かい腕の中で　熟睡に陥る前のこの時間が、堪らなく愛おしい。
　その無防備な寝顔を　眺めれるのは自分だけの特権のようで誇らしい。
　寝静まってしまっても、弱ること無く抱きしめるその腕の力が嬉しい。



「・・・・・・・・あなたは、　・・私のこと　好きなの？」


　聞けなかった問いを、その寝顔に向かってそっと囁く。
彼が一体誰なのか　そんなことはもう、どうでもいい。

紗織の口から溢れ出た言葉たちは
目を閉じると数秒と経たずに、深い眠りに落ちるこの男の耳には届かない。
無論、どんなに耳を澄ましても　その返事は戻ってこない。

それを知っているからこそ、口に出して言えること。
それを十分認識していても、微かに震える小さな声で、
紗織はもう一度　呟いた。


「ねえ・・・私のこと・・・・・　好き？」



　絶えず空から振り落ちて、あちこち穿っては跳ね返る　細やかな雨音だけが
眠りに引き込まれてゆく紗織の意識の裏側で　いつまでも鳴り響いてた。