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Secret space
第9章 9
床の間に飾られた秋海棠が、柔らかな雰囲気を放つ部屋で
紗織は実和と談笑しながら甘い菓子の味を味わっていた。
毎日の食事をひとりで食すのは味気なくて、
頼むと実和はいつも一緒に取ってくれる。

実和は何かと嬉しそうに紗織の世話を焼いてくれるので、
今ではもうすっかり紗織はこの美しく優しい女性に懐いていた。
姉妹が欲しかった紗織は、自分に突然姉が出来たようで嬉しかった。


菓子もお茶もお腹に収めてしまってしばらくすると、
玄関のほうが 人の声やらその足音で、何やら騒がしい。
ちょっと様子を見てきますねと実和が部屋を出て行った。

ひょっとしたら男が帰ってきたのだろうか。
だとしたら実和が把握していないはずがないと思い直る。
紗織が居る間、屋敷に来客など一度も無かったが、
考えられないことではない。
兎も角この部屋でおとなしくしていよう。

そう考えていた矢先、どすどすと荒々しい足音が近づいて、
紗織の居た部屋の戸を、断りもなしにがらりと開けた。

驚いて、紗織は座椅子に座ったままで、
突然の侵入者の顔を見上げた。

戸を開けた状態から動かずに、
上から自分をじろじろと見下ろす若い男は、全く見知らぬ男だった。
人を射抜くような眼差しは、どこかあの男に似ている。
軽く色素の抜かれた明るい髪は、先端が無造作に外へとはねて、
服装もいかにも今風といった感じだ。

侵入者の男はたっぷり紗織を睨めつけた後、目をぱちぱちと瞬かせた。
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