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Secret space
第9章 9
「まさか・・・・・・・。  誰だ? お前」


先に沈黙を破って男が言った。


「そっちこそ、誰なのよ」


突然の侵入者の不躾な態度に腹を立てて、
座椅子から立ち上がりながら紗織が答える。


「お前が、湯河紗織か?」


「何で私の名前を・・・」


「精司様!! なりません! どうかお引き取りください」


実和が、息を切らし、廊下から必死の様相で駆け寄って来た。
精司と呼ばれた男は、面倒臭そうに振り返って実和を一瞥すると
紗織に向き直り、ぞっとする冷笑を口元に浮かべた。


「そうか、お前かぁ・・・
 雅斗のヤツが入れこんでいる女は。

 くっく、 なるほど・・・ こりゃあいい」


紗織は、精司と言う侵入者のその劣情を含み持った様子に
恐れを抱きながらも、思わず問い掛けた。


「まさ・・と?
 雅斗ってあの人のこと?」


精司の肩越しに、実和の困り果てた顔が見える。


「? そうさ、津々井雅斗。
 俺の腹違いの兄で
 親父の七光りのお陰で津々井グループの
 次期社長にもなろうかという下らん男さ。

 なんだ、お前、自分の男の名前も知らなかったのかぁ?」


この突然の侵入者はあっさり男の名を言ってのけた。
ずっと知りたかった名前だが、まだその音にぴんとこない。
津々井グループは、紗織でさえ知っているあの有名な大企業だ。
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