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Secret space
第9章 9
予感は的中した。
精司は固く閉ざされた扉の前に立ち止まった。


「ちっ、鍵かけてやがんのか。
 おい、実和。ここの戸を開けろ」


「それは、いけません」


「ふざけるな!何なら蹴破ったっていいんだぞ?」


実和が渋々と戸の前に立つ。
そして数ある格子の一つの枠を片手で摘むと、すいと横へ引っ張った。
カシャン
小さな音を発して、鍵の開く音がする。
紗織の鼓動はどきどきと、独りでに高まる。

戸の前に立ったままの実和を押しのけて、
ぱぁんと一気に精司が戸を開け放つ。

古びた空気と微かに花の香のような芳香が漏れてきた。


「そうそう・・・この部屋。 全くあの頃のままじゃねぇか」


精司がずかずかと部屋の中に入って言った。
戸惑いながらも紗織は精司の後に続いた。

二十畳ほどの広さの部屋に、品のよい細工の施された桐箪笥、
膝より少し上の高さの横長い小物入れ、
優雅な水鳥の絵が描かれた衝立などが、バランス良く配置されている。
その角度を自由に変えられる鏡台の鏡には
錦紗の布が掛けられている。

何より目に付いたのは、白いシーツのかけられた、どっしりと大きなベッド。
こういうの、見たことある と紗織は思った。
その高さや背もたれの角度を調節出来る介護用のベッドだ。
よく病院なんかで置いてのとほぼ同じものだろう。

足を踏み入れたこの部屋に人の気配はもちろん無く、
きちんと掃除こそはされていたが
ここ数年は使用されていなかったような雰囲気だ。

しかし、どうしてこんな部屋がこの屋敷に?
どうも家具の感じからしてここは女の人の部屋。一体誰の部屋?

紗織の心の中の質問に答えるように、精司が言葉を発した。
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