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第10章 10
「あぁ、そうだったなぁ。まだきちんと教えてやってないンだったなァ。
 雅斗の野郎がお前を手に入れた理由をよぉ。
 もう大体わかってるだろーけどなぁ・・・ 」


精司は手を止め身を起こしてベッドから離れ、
木目美しい飾り棚の一番上に、伏せて置かれた写真立てを手に取った。


「ほら、この写真の女、見てみろよ」


(・・私?・・・・違う・・・私じゃない・・・)


紗織の顔の前に突き出された写真には、
無表情の瞳を真っ直ぐにこちらに向けた端整な顔立ちの少年の隣に
自分でも見紛うほどそっくりの少女が優しい笑みを浮かべていた。


「似てると思わないか?お前に。
 俺も初めて見た時は吃驚したよ。
 この写真は死ぬ一年ぐらい前かなぁ。

 姉貴の名前がなんていうか聞けば余計にオドロキだぜ?
 早織だよ。 さ・お・り。
 名前も同じとはねぇー 漢字が少し違うみたいだが?」


細長い糸が幾つも絡み合うように、
紗織の思考は酷くもたついてなかなか解けない。
精司がさらに言葉を続ける。


「一度も特定の女 持とうとしなかったあいつが
 家に連れ込んだっていうから、どうしたものかと思ったが、
 お前見て納得したね。
 思えばあいつの姉に対する態度は普通じゃなかったからなぁ。

 姉貴と雅斗は俺とは別のこの屋敷に住んでたンだけどさぁ
 俺がお袋と一緒に見舞いにきて、姉貴と話すたびに、
 あいつ、すげえ眼をして睨んでやがったもんな。
 やっぱたいしたシスコンだったんだなぁ。

 どっからかこんなそっくりな女、見つけてきて慰みモノにしてよ」
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