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Secret space
第10章 10
 手足に縄を掛けられ、部屋の床に身を横たえていた実和の
手縄を解く作業に従事していた正平と呼ばれた津々井家の運転手は、
自分よりも一回り以上年若い主人の言葉に素早く従って、
意識の抜けた精司の身体をうんうんと引っ張っていく。

すっかり萎えた下半身を晒したまま引きずられていく精司の滑稽な姿に
男は一瞥もくれず、紗織の方へと駆け寄った。

皺々にかき乱されたベッドのシーツの上に
紗織は、ほとんど全裸に近い状態で呆然と横たわっている。
強く縄を絡められ、手首から先がはっきりと赤く染まった細腕が痛々しい。

男は、紗織がもがいていたことにより、
すっかり固くひしめき合った結び目を解くのは諦めて、
取り出したライターで器用に炙って焼き切った。

肌を露出させるよう捲し上げられた衣服を、男は手早く戻しながら
束縛が解けても未だ頭上に挙げられたままの両腕を戻させ、
背と肩へと手を回し、抱いてその身を起こさせる。


「おい・・・おい! しっかりしろ」


青ざめて白い頬をぺちぺちと平手で軽く叩く。
きつく結ばれすっかり色が褪せた唇。
目は見開いてはいるが、瞳に映るものを全く認識してはいないように思える。

男は、その冷えた身体を強く抱きとめた。
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