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Secret space
第10章 10
「・・ぅ・・・・・あ・・・・」


 馴染みにある体温に力強く包まれて、
紗織の身体にようやく意識がぼんやりと戻りだす。


(・・・・だれ・・? 誰?   誰か が 

 わたしのからだ 抱きしめてる・・  私の身体を・・・・ )


男の腕の中で、覚醒した紗織の感情が一気にはじける。


「いや・・・いや!!! いやぁあ!! いやあぁああ!!!」


身体をがくがくと強張らせ、
滅茶苦茶に暴れもがいて 口から悲痛な叫びを立ち上らせる。
その細身の身体からのものとは思えない力をみせて暴れる。


「いやああ!! やだあぁ!! さわらないで
 さわらないで さわらないでぇッ!!!」


「さおり!  落ち着け  俺だ!」


男の声に、身体の動きを止めた紗織の瞳孔が
ようやく男の顔を写し取らえて、その乾いた目の縁に涙を滲ませる。
僅かに開けた唇から空気をひゅうと吸い込む。

男が ほっと息を吐いた。


「早織・・・」


「・その名前で 呼ばないでっっ!!!」


一瞬、和みかけたその表情が、一変して強張り
紗織の瞳の奥には、赤黒い怒りの炎がぐらぐらと揺らいでいる。


「いやッ!!! はなして はなしてぇえ!!!!」


鼓膜を突き刺すほどの悲鳴をあげて、
男の服に爪を立て激しくもがき暴れる。
男はその動きごと押さえなだめるように、紗織をなおも強く抱き締める。


「・・ッ・・・・・」


頭の中で弾けるような激しい痛みに男は顔を顰めた。
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