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第10章 10
「紗織さん・・・・」


実和は悲痛なまでに眉を顰めて、泣き叫ぶ紗織の身体をそっと抱き止めた。
実和の柔らかい腕の中で、身をも引き攣らせて
紗織は尚も泣きじゃくる。
消え入る声でちいさく呟く。


「・・・こんなことってある・・・?
 わたしには もう  あの人しか いなかったのに
 もう あの人しか いらなかったのに  ・・・こんなことって・・・・・」


小刻みに震える細い肩を、優しくさすることしか実和には出来なかった。




「実和、お前は もう下がれ」


ただ静かに、泣く紗織をなだめていると、
いつの間に部屋に入ったのか、背後から男の声がした。


「や・・・いやぁあ!!」


今度は紗織が実和の身体にすがり付いた。
ぶるぶると震えて身を竦ませる紗織を抱き返しながら
実和は眉根を寄せて、訴えるように背後の男を仰ぎ見た。


「旦那様・・・・」


「このことに、口出しするなと言った筈だ。
 俺に 二度も言わせるな」


男の声が冷ややかに響く。僅かに苛立ちが含まれている。

ここまでが、実和に出来る全てだった。
産声をあげたその時から、既に津々井家の使用人と、
人生が決まっていた実和にとって
主人の命は絶対で、何よりも況して優先させなければならないのだ。
逆らう意思など決して、頭にちらりとも過ぎらないよう
そういうふうに教育され、生きてきたのだから。


「すみま せん・・・・」


実和は紗織の手をそっと解き、身を捩るようにして抜け出すと、
俊敏な動作でいつものように足音も残さずに、静かに出て行った。
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