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Secret space
第11章 11
 家からの緊急のコールを理由に、やっとその場を離れて屋敷に向かうと
スモークフィルムを張り巡らせた見慣れないバンが車庫を占めており、
玄関先には黒服の厳つい男が待ち構えていた。

屋敷を占拠していた不埒な侵入者は合計四人。
精司は兎も角、其れなりに腕の立つ黒尽くめの男共に
同時に取り掛かられたのではとても敵わなかっただろう。
上手く一人一人を相手に出来たのが幸いした。

しかし、二人目を伸している間に、後ろに忍び寄られた男から
振り下ろされた角材を、危うく避けて頭部への打撃を逃れたのは良いものの
強打した肩が一日経って、腫れと痛みを増してきている。


「先週、お求めになった資料をこちらにご用意させて頂きました」


 追憶に耽っていた男に、高嶋がA4サイズの書類の束を
淹れたてのコーヒーと共に差し出す。


「有難う」


薄めのカップを片手に書類の最初のページを捲る。


「・・・・ッ・・」


ビリ と走る痛みに男は顔を顰めた。


「すみません。まだ熱かったでしょうか?」


有能な秘書の出す飲み物は、猫舌である男の好みを熟知して
常に適切な温度で提供される。これも例外では無かった。


「いや、 口に怪我をしていたのを忘れていた」


男は苦笑してカップを机に戻す。
目を戻した白い書類の上に、ふと紗織の顔が浮かんだ。
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