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第11章 11
昨夜の長く激しい行為の最中、
紗織は絶えずその目から涙を零して泣いていた。

止めようとすれば止めれたのだろう。
しかし紗織が泣けば泣くほど、
燃え上がり増殖する劣情の欲するままに、その身体を貪った。

 男はすっと書類から目を背け、時計を見た。

プライドや地位もある手前、かなり遠回しではあるが、
必要以上に助言を求めてくる現社長が社内に姿を現すのは
まだ当分先のことだろう。

男は明確な支配と精密な管理を好み、またその術に長けていた。
その点でも親の跡を継いだとは言え、今の仕事は天職と言える。
時代の隆盛を見極め、必要なものは選び、必要でないものは切り捨てる。
つまりは単純な取捨選択なのだ。
何も全て出来る必要は無い。
適した人材を選びまた見つけ、その仕事を任せれば良い。

それだけのことに何故 ああも苦悩し迷うのか、男には不思議でならない。
もちろん、物事は全てそう簡単には行くものでは無いが、
だからこそ遣り甲斐があるというものだろう。

ふぅと一息ついて集中を呼び戻すと、男は仕事に没頭していった。
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