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第11章 11
「お待ち下さい!」


実和は俊敏な動作でさっと前に出て、男の行く手を遮った。


「口出しをするなとの事、 重々承知致しておりますが、
 一体、紗織さんの身に何が起こったのか、
 それだけはお聞かせ頂けませんか」


「それは医師に聞くんだな。俺が分かる事ではない」


「私が尋ねていますのは、
 お泣きになる紗織さんを残してお二人になったあの夜の事です!!」


実和がきっぱりと、声を荒げて言った。
そのようなことは彼女の経験の中に 数えるほども無かった。


「お前がそんな、分かりきった事を聞くのか」


男が嘲るような微笑を含んで実和を見た。
実和は男の瞳の奥をじっと見据えた。


「・・・紗織さんに、一体何と仰ったのですか?」


「ただ本当の事を告げただけだ。
 お前も、あいつに初めて会った時から気付いていた筈だ」


「一体、何と 仰ったのですか」


実和は辛抱強く、再び言葉を繰り返した。


「そのままさ。
 愛していたがもう死んだ 姉にそっくりなお前を買って
 その代わりにしたのだとな」
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