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第11章 １１

「お前に姉を重ねて抱いたのは、ただ一度、最初のあの瞬間だけだ。

　だが　それ以外は全て違った。
　むしろそうしない自分が不思議だった。
　混同するのだけは避けたかったが、
　目が勝手に姉の影を探そうとすれば鮮明に　ただお前だけが浮かび上がった。

　姿は余りにも似ていたが、魂は余りにも違っていた。


　 　何時の間にか惹かれていた。　　お前に

　 　その激しい気性に　すぐに涙する瞳に

　 　決して屈そうとしない強い心に


　そう、最初は
　決して涙を見せたことの無い姉の顔が、
　くしゃくしゃに歪んで雫を滴らせるのに
　酷く驚いたものだが・・・・」




男は添えた自分の手を睨め付けて、眉を顰め、
しばらく視界をどこか遠くに彷徨わせた。




「今、姉の顔を思い出そうとすると、
　どうしてもお前になるんだ・・・・」


何度胸で思い描いても
凛とした後ろ姿
肩を掴んで振り向かせれば必ず
涙を流したお前の泣き顔



絶えずころころと　表情を変えて
目を楽しませたその顔が、今や表情どころか生気さえ失ったようだ。



「・・・・そんな顔を・・俺に見せるな

　起きろ・・・・」