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Secret space
第12章 12
目を開けると 


ちかちかと眼を刺す眩しさで視界が白んだ。
そこらじゅうに溢れる光に慣れるとすぐに 男の顔が飛び込んだ。

男は泣いていた。



先ほど目から何か落ちたような気がしたのは
自分のではなく、男の涙だったのかと 紗織は何となく納得をした。

ぱちくりと瞬く紗織の視線を受け止めて
男が優しく微笑んだ。

それは視神経から染み入って、紗織の心を溶けさせる。

この笑顔は そのまま自分だけに向けられたものだと
紗織は自然に理解した。



ただ、静かにはらはらと
漆黒の瞳から染み出す液体が、何故こんなに澄んで透明なのか不思議だった。


男は 腕を紗織の背に回し、身を起こさせ強く胸にかき抱いた。

自分の体が まるでずっと動かしていなかったかのように
男の腕の中でぱきぱきと軋んだ。


この世の全てを抱き締めるような腕の力に
紗織はただため息を吐くしかなかった。

男の胸に住む者が 自分であると言うことに
紗織は疑いもしなかった。

何故そんな思考が湧いたのかは分からない。
ただ そう感じた。


紗織の身を抱きしめる間にも
男の目からまた はたはたと雫が落ちる。
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