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第13章 番外 前編
「お嬢様。実和です。入っても宜しいでしょうか」


実和は早織の部屋の外の戸の前で、声を掛けた。
返事がない。


「お嬢様?」


怪訝に思ってもう一度声を掛ける。
早織は確かに部屋に居る筈だ。
声が出ないほどの発作が起きているのかも知れない。


「実和さん、少し待ってくださらない?」


いつもの清んだ声が中から聞こえてきた。実和はほっと胸を撫で下ろす。

部屋の戸を開けたとき そこにはすでに雅斗がいた。
ベッドの上の早織は、顔色が少し青ざめてはいたが、発作は起きていないようだった。
ただ 部屋の二人の間には 何か違った奇妙な空気が漂っていた。

その張り詰めた雰囲気に戸惑って立ち尽くしている実和を、
雅斗は一瞥して睨み付け しなやかな動作で早織の部屋を出て行った。
その後姿を目で追いながら、早織は微笑んで言った。


「ありがとう、実和さん。丁度 呼ぼうと思っていたところだったの」


「どうか・・・なさったのですか?」


「ええ。ちょっと   ね」


そう言うと早織は、少しだけ悲しそうに微笑んで見せたのだった。



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