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Secret space
第13章 番外 前編
北風が吹き荒れる秋の終わり、久々に暖かな日差しの降った昼の日、
早織はふと編物の手を休めて、実和をじぃと見つめて声を掛けた。
「ねぇ、実和さん」
「はい?」
「何か生活するのに足りていないものがあるのではなくて?
まだここの屋敷に馴れない?」
「別にそのようなこと」
実和は静かに笑んでみせた。
「そうやって笑って誤魔化しても駄目。隠しても分かるの。
何か、不満があるのなら言って頂戴。
前の屋敷での事ならば、忘れろなんてとても言えないけれど
辛いことならば、言っておしまいなさい?そのほうがきっと楽になるわ」
二人の同じ年の少女を打ち解けさせるのに、そう長い月日は掛からなかった。
穏やかな思い遣りで人を包み込むような早織の性格は、人から話を聞きだす術に長けていた。
幼少から長く床に伏せっていた早織に比べ、
世間の人間となんら変わらぬ生活を送ってはいた実和に、
早織はいろいろな話を聞きたがった。
実和は決して多弁な性質では無かったが、早織の声に耳を傾けているうちに、
ぽつぽつと自ら話をするようになっていた。
今日自分がふと思った些細な事柄や、
使用人の中でだけ交わされている愚痴なようなものでさえ、早織に漏らしてしまっていた。
早織はふと編物の手を休めて、実和をじぃと見つめて声を掛けた。
「ねぇ、実和さん」
「はい?」
「何か生活するのに足りていないものがあるのではなくて?
まだここの屋敷に馴れない?」
「別にそのようなこと」
実和は静かに笑んでみせた。
「そうやって笑って誤魔化しても駄目。隠しても分かるの。
何か、不満があるのなら言って頂戴。
前の屋敷での事ならば、忘れろなんてとても言えないけれど
辛いことならば、言っておしまいなさい?そのほうがきっと楽になるわ」
二人の同じ年の少女を打ち解けさせるのに、そう長い月日は掛からなかった。
穏やかな思い遣りで人を包み込むような早織の性格は、人から話を聞きだす術に長けていた。
幼少から長く床に伏せっていた早織に比べ、
世間の人間となんら変わらぬ生活を送ってはいた実和に、
早織はいろいろな話を聞きたがった。
実和は決して多弁な性質では無かったが、早織の声に耳を傾けているうちに、
ぽつぽつと自ら話をするようになっていた。
今日自分がふと思った些細な事柄や、
使用人の中でだけ交わされている愚痴なようなものでさえ、早織に漏らしてしまっていた。