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第13章 番外 前編
「いいえ、お嬢様。あの事は、もう宜しいのです」


奇しくも志津子に酷い大火傷を負わされ、生死を彷徨ったことで、
本邸での地獄のような日々を抜け出してからの自分は
早織というこれ以上はないと断言して差し障りない良い主に恵まれ、何の憂いもなく暮らしているのだ。
実和は寧ろ志津子の癇癪に、感謝の念を捧げたい気持ちであった。


「この屋敷にはすぐに慣れましたわ。皆、良くして下さいます。

 ただ・・・
 雅斗さまが、私のことを酷く嫌っていらっしゃるようなので・・・それが気になりまして」


実和の言葉を聞いて、くすりと笑って早織が答えた。


「雅斗が? あの子は誰にでも素っ気無いのよ。
 あの乳母でさえ、あんな人になつかない子は珍しいと不満を漏らしたぐらいなの」


「でも・・・私と顔を合わせなさいますと、確かに嫌な顔をなさるのです。
 決して口などきいては下さいません。他の方には普通にお話になっているのに。

 何故なのでしょう。
 私は何か、私の知らぬうちに とても失礼なことをしてしまったのではないでしょうか・・・」


実和は秀麗な眉根をひっそりと寄せた。
それが常に、心に暗い影を落とす原因だった。

早織は、実和の質問にはすぐには答えずに、編み物をしていた手をしばらく止めて、
何か考え込みながらも声を発した。


「実和さんって、私の亡くなった母に似ているわ。

 ・・・実は私、ほとんど記憶が無くて、写真でしか見たことはないのだけれど。
 それでも分かるの。
 顔はそれ程似てる訳では無いけれど、雰囲気がそっくり。そう言われたことない?」


「ええ・・・・両親からも よくそう言われましたわ」


実和の生まれた家は代々 津々井家に仕えている家系だ。
いずれ津々井家の使用人として働くことになるということは、
実和が産声をあげた、その瞬間に決まっていた。

その両親からお前は亡くなられた奥様そっくりだと
年を重ねるたびに言われるようになっていた。


「雅斗があなたにいつも嫌そうな顔をするというのは、そのせいね」


早織は断言するように言い放つと、編みかけの手の動きを再開させた。


「そう・・・・なのですか?」


実和は首を傾げた。
亡くした母親と似ていることで慕われるのなら分かるが、
逆に疎まれるというのは何だか腑に落ちない。
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