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第14章 番外 後編
「ああっ!もう止めましょう?こんな暗い話。
 それよりも実和さん、あの木を見て?」


早織は全て吹っ切るように明るい声で叫ぶと、硝子窓から見える庭の木々を指差した。


「庭の紅葉ですか?美しいですわね。何時見ても、思わず見蕩れてしまいますわ」


冷たい北風の吹く週が終わると、
木々は目の覚めるような各々の色彩を身に纏って陽の光に輝いていた。


「ううん、あのね。庭の木々も、もちろん美しいのだけれど、
 私が見て欲しいのは その先のあの山の木よ。
 少し上の・・・ そう 楓のような赤ではなくて、ピンク色に染まっている木があるでしょう?」


どうも彼女は、裏手の山の方を指しているらしかった。


「ええ。分かりますわ。ここからでも とても綺麗に見えますわね。
 変わった色の紅葉ですこと」


「あれはね、桜の木よ。山桜」


「まあ」


「あの桜はね、二度咲くの。春に花、秋に葉が ね。

春だと、もっと目立つわ。
新緑に包まれていく山の木々に、
一本だけぱっと燃えているかのように ピンク色に際立つあの木が見えるの」


「素敵ですわね」


「そうでしょう?私ね、毎年ここから眺めては、ああ綺麗だなって見惚れて
 すぐにでもあの山に登って、あの桜の木のもとに行けたらなと思うの」


「まあ 無理ですわ、そんな。あの山は小さいですけれど、ろくな道がございませんもの」


「そうなのよね。皆そう言うわ。
 でも行ってみたいの。
 満開のあの桜の木の下で、寝そべって花見が出来たなら きっと凄く素敵だと思うわ」


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