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Secret space
第14章 番外 後編
例年になく静かに新年を迎え、
廊下を渡る足先が芯から凍りつくように感じる日々が続いた。
日は短く、あっという間に夕闇が支配し
ちらちらと降り始めた綿毛のような雪は、一夜にして風景を白銀の世界へと変えた。

記録的な大雪の降ったこの日、久々に体調を取り戻した早織は
優しく甘い声を出して、実和に言った。


「私、果物が食べたいわ。何かある?聞いてきてくださらない?」


「林檎と蜜柑と、あと干し柿があるそうですよ」


「そう、残念。私、桜桃が食べたかったのだけど。
 ねえ実和さん、ちょっと行って買ってきて下さらない?缶詰でもいいの」


「私がですか?」


「ええ、そう」


「分かりましたわ。この雪ですから時間が掛かるかも知れませんけれど」


早織にしては珍しい我儘に、実和は苦笑しながら答えた。


「ありがとう、実和さん」


にっこり微笑む少女を後にして実和は部屋を出て行った。
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